藤谷治、小学館
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以前、このブログに掲載した【舟に乗れ!】を補完するような形のお話です。
【舟に乗れ!】では主人公が音楽高校受験をするところから、高校卒業までが主なお話の舞台になってますが、今回紹介する【世界でいちばん美しい】は主人公が小学生から30代くらいになるまでを扱っています。
『せった君』という少し知恵遅れで、音楽、それも作曲に才能を発揮した男性を軸に話しが進んでいきます。題名にある「美しい」ものはせった君が他人の評価を全く問題にせず、いつも朗らかに、心のままに作曲を続ける姿勢を指しています。ですが、この物語を語る主人公もせった君も世間から注目されることなく物語を終えます。
努力して、それが報われてハッピーエンドの夢のあるお話も良いのだけど、こんな現実的なお話にも価値はあります。自分だけが特別不幸なんだと思わずに済みますから。
私も若いときには努力すれば夢は叶うみたいなことを本気で信じていましたが、45歳の今、人生で夢を叶えるためには、
努力、才能、運
の3つが揃わないとダメだと思うようになりました。この3つが揃う人なんて人口の何パーセントくらいなんでしょうね?普通預金の金利くらいでしょうか?そんな、神様に選ばれなかった人たちに向けて書かれた小説です。