うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

思い出のマーニー

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スタジオジブリ
☆☆☆
はじめに、私はお金を払って映画館で見て良かったと思いました。ですが、

 

『万人受けする映画ではないな』

 

とも思いました。対象年齢は中学生以上です。アクションおよび気楽なファンタジーを希望する方向けではありません。また、以下の3つの条件を全て満たす方はご覧にならないことをお勧めします。

 

①健康だ
②友達がたくさんいる
③家族と仲良く暮らしている

 

というのも、これら3つのことについて、どれも、主人公である杏奈の気持ちになって想像することができない人は物語に感情移入できないからです。

 

お話は寂しさをひとりぼっちで抱え込んでしまった女の子が、謎めいた少女との出会いを経て成長していく物語です。

 

その女の子、12歳の杏奈には友達がいません。幼くして両親を失い、養父母と暮らしてきましたが、あることが原因で心を閉ざしてしまいました。表向きは普通な顔をしていても、持病のぜんそくが悪化するなど、内なる葛藤は隠せません。都市部にある自宅を離れ、養母の親戚が住む静かな海辺の村で静養することになります。

 

そこで彼女の心を引きつけるのが、入江に面して立つ無人の邸宅、通称「湿っ地屋敷」。見たこともないはずなのに知っている気がする。夢にまで見る。そしてある晩、その屋敷から飛び出してきた金髪の少女、マーニーに出会い、なぜかすぐ仲良くなります。

 

〈この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間〉

 

序盤の杏奈は、誰かの助けが必要でも素直になれず『私は、私が嫌い』と身を固くするばかり。その様子を人ごとだと思えません。

 

絵はさすがジブリです。とても綺麗で、マーニーに出会った後、表現がますます繊細になっていきます。月光さす夜の水面のさざめき。深い森の緑。ふたりで過ごす密やかな時間。

 

誰かに愛され、自らも愛する喜びを発見し、自分の殻を破っていく杏奈の物語は、実は、誰にとっても切実な冒険ではないでしょうか。

 

終盤、胸にぐっと迫るのは、時空を超えた〈輪〉の存在。その輪の中へと杏奈を導く愛の力を素直に信じたくなりました。