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ジャパン・ディグニティ

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高森美由紀、産業編集センター
☆☆☆
表題だけ見てもどんなお話か分かりずらいと思います。辞書で調べると、

 

japan(名)①漆 ②漆器
dignity(名)威厳、気品

 

むか~し、むかし、日本の漆器はヨーロッパで高い評価を受けていました。いつしか、英語で漆器を【 japan 】と呼ぶようになったのですが、このお話はそんな漆塗り職人を目指すようになった青木美也子(22)を主人公にしたお話です。

 

美也子の父親は腕のいい漆塗り職人なのですが、なにしろ本格的な漆器は手間暇かけて作られるので、とても高価です。ちっとも売れません。母親がパートに出ることで何とか食べていましたが、ついに母親の堪忍袋の緒が切れます。母親は離婚届を父親に叩き付けて出て行ってしまいました。

 

美也子はというと、近所のスーパーでレジ打ちのパートをして家計を支えていたのですが、何をやっても不器用な美也子は客や上司から叱られてばかり。どんよりとした気分で毎日を送っています。

 

人には二種類いるような気がします。イイことだけ記憶して前向きに生きられる人と、嫌なことばかり記憶して、新しいことに挑戦することに臆病になってしまう人。美也子は完全に後者のタイプなのですが、パートから帰ってメソメソしている美也子を妹のユウが背中を押します。

 

「友達がいなくて、人見知りのお姉ちゃんにレジ打ちなんて無理だったんだよ。辞めちゃえ、辞めちゃえ!」

 

かくして、レジ打ちのパートを辞めた美也子ですが、田舎の津軽で高卒の美也子を雇ってくれる職場なんてありません。崖っぷちに追い込まれてついに、美也子が決心するのです。

 

「私、漆塗り職人になる!」

 

大量生産、大量廃棄の時代に、高価な漆器を買ってくれる人なんてめったにいないのですが、それでも美也子の工房を訪ねて来るお客さんが時折りいます。漆器は使うことで風合いが出て来るし、修理すれば何十年も使えるのです。そのため、修理を頼みに来るお客さんは漆器とともに重ねた思い出を話してくれるので、そのことが美也子のエネルギーになります。

 

しかし、優れた仕事をしても、伝統を守った製品作りと修理では食べていくだけで精一杯です。はたして、美也子はこの経済的危機を乗り越えられるのでしょうか。

 

ここからは余談です。
私はバイオリンが好きで、制作教室に通って1つ作ったことがあるのですが、完成するまでに約400時間かかりました。熟練工だと約200時間で完成させられるそうです。熟練工の時給を仮に二千円として計算すると、

 

2000(円/時間)×200(時間)=40万円

 

となります。材料費、工具の購入や維持費も加えるとバイオリン1つを50万円で売らなければ日本では生計が成り立たないと思います。しかし、バイオリンに50万円払える人って日本に何人いますかね?完成品を一人で作ることが出来る職人という職業に私は憧れを感じますが、この物語の主人公がそうであるように、現実は厳しいです。