うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

すべて真夜中の恋人たち

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川上未映子講談社
☆☆☆
題名から、複数の人物たちが主役級で登場する群像劇か、短編集だと思ったのですが違いました。

 

主人公は入江冬子(34)。大学を卒業して出版社に就職し、そこで校閲の仕事をしていましたが人間関係に疲れ、フリーの校閲者に転身して現在に至っています。

 

冬子は寡黙で、与えられた仕事をコツコツやる以外なんの取り柄もなく、地味で、無趣味で、休みの日は用が無ければずっと家にいる女性です。大都会東京に暮らしながら、極力人との接触を避けているため、身なりも垢抜けません。

 

自己完結した生活を続けてきた冬子でしたが、孤独が彼女の心を少しづつ蝕み始めます。それまで、飲めなかったお酒を手にするようになり、次第に量が増え、校閲の仕事をしているとき以外はお酒を飲んでいるような生活になってしまいます。

 

そんなあるとき、ふと目にしたカルチャーセンターのチラシを見て、ここへ行けば新しい世界が広がったり、新しい出会いが待っているような気がしてきて出かけて行きます。

 

お酒を飲んで勢いをつけて出かけたカルチャーセンターですが、申し込み窓口で気持ち悪くなって吐いてしまいます。そのせいで、結局入会はしないのですが、このとき親切にしてくれた紳士、三束(みつつか、58)と交流を持つようになります。

 

ネットサーフィンをしていたら、ブログの閲覧数を上げるコツが書いてありました。

 

①生活に役立つ情報を載せましょう。
②ポジティブで、明るい記事を載せましょう。

 

と書かれていました。

 

本書は実用書ではないため①は関係ありません。問題は②なんですが、冬子の物語は②と正反対の物語です。なので、②のような文章を読みたい人はパスして下さい。しかし、「仕事もプライベートも充実してます!」みたいなブログばかりを読んでいると、

 

『そんなに世の中、リア充で溢れかえっているワケ?』

 

って私は思っちゃうんですよね。案外、冬子の物語に共感する人の方がたくさんいるように思うのですが、いかがでしょうか?

 

34歳と58歳の交流ってどんなものなのか、興味がある方はどうぞ手に取って読んでみて下さい。私は冬子の三束を思う気持ちも、三束が最後に取った行動にも共感することができました。