とっぴんぱらりの風太郎

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万城目学文芸春秋
☆☆☆
手にしたとき、ずしりと重みを感じる本、最終ページの項数を見ると《746》となっています。

 

『こんなに長い小説、最後まで読めるかなぁ』

 

と自信なく読み始めたのですが、面白くて、そんな心配は無用でした。

 

豊臣秀吉が他界したとき、伊賀の忍者の頭目が再び戦乱の世が訪れることを予想して、身寄りのない幼い子供たちを忍者屋敷に集めました。そして、子供たちに忍者になるための英才教育を施すのです。そして、死ぬ者が続出する厳しい訓練を生き残り、忍者として一人前になった風太郎は数奇な巡り合わせを経て、大阪城の落城に立ち会うことになります。

 

物語のはじまり、風太郎は仕えていた殿様の怒りを買って、忍者の里を追放されてしまい、戦とは無縁の長閑な暮らしを始めるのですが、一つ、一つと不思議な縁を重ねていくごとに大きな歴史のうねりに飲み込まれていきます。この流れが実に巧みで、読者の心を少しずつ本の中へ引き込み、気が付いた時には風太郎と一緒に大坂の陣に参加していること間違いなしです。

 

脇役には風太郎と一緒に厳しい訓練を生き残った忍者たちが登場します。格闘術に優れた蝉、薬や毒に精通している常世、人を騙すことが得意な百市、火薬を扱わせたら一番の黒弓。彼らは言ってみれば同窓生なのですが、訓練を共にした時代には生き残りをかけたライバルでもあったため、お互いの技量を認め合う仲ではあっても、なれ合いの仲ではありません。そんな、ハードボイルドな忍者たちが無意識に風太郎に引きつけられて、最後には風太郎に背中を託して戦地を駆け抜けて行くようになります。

 

権力者たちや、人外の者の思惑まで加わって、物語は予想もしない怒涛のようなラストを迎えます。時代小説が好きな方なら読み始めれば、最後まで一気に読破できること請け合い、お勧めの一冊です。