七時間半

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獅子文六ちくま文庫
☆☆☆
二人のヒロインが豪華特急【ちどり】の車内で、恋の火花を散らすラブコメディです。

 

昭和30年代、東京―大阪間は特急【ちどり】が7時間半で結んでいました。この物語は、その車内で働く2人の若い女性が、東京―大阪間の車中で、将来の夫となるべき男性を巡って恋のさや当てをするお話です。

 

一人目のヒロインは藤倉サヨ子(23歳)、食堂車のウエイトレスのリーダーをしています。ウエイトレスの中では一番のベテランで、仕事の丁寧さに定評があり、勤務態度はまじめ、入社以来大きな失敗をしたことがない優秀なウエイトレスです。その仕事ぶりを見て、「うちの息子のお嫁さんになってほしい」と熱心にスカウトするお客さんがいるほどです。

 

二人目のヒロインは【ちどりガール】の今出川有女子(いまでがわうめこ)22歳です。【ちどりガール】とは何かを説明しなければなりません。特急【ちどり】は一等車から三等車まであり、【ちどりガール】は二等車で、今で言うキャビンアテンダントのような仕事をする女性たちです。容姿を重視して採用するため美人揃いで有名で、オーダーメイドで仕立てられるミリタリールックの制服に憧れる若い女性がたくさんいました。さて、有女子ですが、美人揃いの【ちどりガール】の中でも目立つ存在で、【ミスちどり】と評判の美人です。本人も自分が美人であることを意識していて、物語の中では4人の男性を手玉に取って立ち回る小悪魔キャラとして登場します。

 

本からは昭和30年代の空気がぷんぷん伝わってきます。そして、「なんだか、日本じゃないみたい」と思うことがいくつもあります。一方、サヨ子や有女子は生きていれば今頃70代後半のお婆さんなわけで、彼女たちにも今の娘たちと変わらないこんな青春があったんだと不思議な気持ちにもなります。

 

文章はとても読みやすく、まるでテレビドラマの脚本をそのまま読んでいるようです。実際、一度実写化されているようで、こんなに楽しいお話ならもう一度、どこかのテレビ局で実写ドラマ化してくれないものかと思いました。

 

あなたも、特急【ちどり】に乗って昭和30年代の日本を体験してみませんか?ラブコメディを探している方に、ぜひお勧めの一冊です。