自由学校

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獅子文六ちくま文庫
☆☆☆
題名から、学校を舞台にしたお話かと思っていましたが、そうではありませんでした。

 

真珠湾攻撃が行われる前の月に結婚した夫婦が、戦後になって突然与えられた自由を巡って試行錯誤するさまを社会風刺した小説です。

 

舞台は、あちこちに戦災の跡が残る東京です。まだ開発が進んでいない中央線沿線の風景や、お茶ノ水あたりを流れる神田川の川べりにバラックが立ち並んでいたりする戦後間もない東京の姿と現在の東京とを比べて、その変貌ぶりに驚きました。

 

「変わっていないなぁ」、と思うこともありました。それは男女の関係です。女性は男性に支配されていると不満に思い、男性は女性が思いのままにならぬと不満に思っているのです。そして、男女ともに自由を願っているのですが、試行錯誤しても満足する結果にはならないというのは1940年代も今も変わりません。

 

私が役所に就職したのは平成になって間もなくのころです。当時はボールペンで書類を書き、内部統制もないに等しく、「のんびりした時代だった」、と懐かしく思っているのですが、1940年代の人たちも昔を懐かしみ、今の世の中を窮屈になったと感じているのは可笑しかったです。歳をとると皆そのように思うものなんでしょうか?

 

戦前に自由を奪われて暮らしていた時代と、戦後に自由を与えられて暮らしている時代を知っている老学者が、「自由は幸せを保証するものではない」とつぶやくのが印象に残りました。