東京近江寮食堂

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渡辺淳子、光文社
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もうすぐ還暦を迎える妙子のもとに、なんの前触れもなく失踪してしまった夫から10年ぶりにハガキが届きました。住所は書いてありませんでしたが、ハガキの消印は東京文京区となっています。妙子は夫を探すために住んでいる滋賀県から上京します。

 

ところが、上京してすぐに財布を落としてしまい途方に暮れることになってしまいます。捨てる神あれば拾う神あり、そんな妙子を滋賀県から補助を受けて運営されている宿泊施設の責任者が救いの手を差し伸べてくれるのです。

 

この責任者、安江は妙子との出会いの直後に手を怪我してしまいます。食堂で料理もしていた安江は妙子に、宿泊費を安くするから自分の代わりに食事を作ってくれないかと頼み、妙子がそれを受け入れることで物語の始まりとなります。

 

安江の作る料理は美味しくなかったので、食堂を利用する人はこれまで少なかったのですが、料理上手な妙子が厨房に立つようになってからは口コミとSNSの力でお客さんが増えていきます。その中には、抗がん剤治療を受けている男性、重度の認知症のお婆さん、家出少女、失業中の中年男などなど、生きる希望を失いかけた人々もいるのです。

 

そんな生きる希望を失いかけた人々が、妙子の人柄に接し、妙子の作る素朴な郷土料理を食べることで活力を得ていく姿が描かれています。

 

逆境の時こそ自暴自棄にならずに意識して身体によい栄養のある食事を摂り、規則正しい生活をしていれば、いつかはその先に光が見えて来るんじゃないかと思わせてくれるお話です。