鳩とクラウジウスの原理

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松尾佑一、角川書店
☆☆☆
『エネルギーは必ず高い方から低い方へと流れていく』
これをクラウジウスの原理という。

 

中学生になる頃から20代前半くらいまでの期間の若者たちにとって、異性にもてるか否かは非常に重大な関心事です。その期間に異性からまったく相手にされなかった人の中には、その後の人生に暗い影を落とすことになる人もいます。

 

この物語の主人公、磯野(25)は小さな広告屋でキャッチコピーを考える仕事をしています。と言っても仕事は少なく薄給で、住まいは薄汚れた6畳一間のアパートです。そこへ、いつも第二次大戦中のドイツ軍が着用していた軍服を身に着けている大男、通称ロンメルが失業して転がり込んできます。

 

二人は大学時代の友人で、恋愛をしたいと強く願いながら、それが叶わなかった男たちです。大学生のとき二人は、世の恋人たちを見て、

 

『自分たちは高みにあり、カップルたちは安易な選択をした低俗な者たち』

 

と決めつけて憎しみ、これはクラウジウスの原理が働いたためだと信じていました。

 

そんな不遇な青春時代を送ったがために精神がねじ曲がってしまった男たちのアパートに、これまた失業した可愛らしい女性、犬さんが転がり込んでくるのです。

 

3人の中では、磯野が一番まともであり、残り2人は社会不適応者だったため、2人を養うために磯野は新しい仕事を始めることになります。そして、不思議な縁から伝書鳩で物を運ぶ会社に就職するのですが、そこで磯野はロンメルの秘密の活動について知ることになるのです。

 

なんの取り柄もなく、異性にももてない男たちが、心の平安を得るためにひねくれた考えをしてみたり、世の中に八つ当たりしたりする姿を笑う物語です。そして、そんな男たちが無邪気で可愛らしい犬さんに戸惑う姿もまた笑えます。果たして、男たちに幸せは訪れるのでしょうか?