うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

満月ケチャップライス

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朱川湊人講談社
☆☆☆
もうすぐ30歳になる進也が、中学一年生から二年生だった頃の不思議で心温まる体験を読者に語って聞かせるお話です。

 

進也の家族は30代の母親と小学四年生の妹です。

 

妹は小さかった時、進也がちょっと目を離したすきに大怪我をして足が不自由になってしまいました。見栄っ張りで、分不相応な物を身に着け、高級車を乗り回していた父親はそんな風になってしまった妹を見るのが嫌で、家を出ていってしまいます。

 

それ以来進也は、自分が家族をバラバラにしてしまったと責任を感じて、年の割には影のある中学生になってしまいました。妹は普通の小学校に通っていますが、足が不自由なことで友達と一緒に遊ぶことが出来ず、一人で家にいることが多くなっています。

 

母親は明るく元気が取り柄の人で、スナックを経営していて、飲みすぎて終電に間に合わなかったお客さんをときどき家に連れてきて、泊めたりします。そのため、朝起きると知らない人が家の中で寝ているなんてことがある少し変わった家庭環境です。

 

そんな母親が連れてきた人の一人、チキさんが美味しい家庭料理と不思議な力で暗くなりがちな母子家庭に笑顔を取り戻してくれるようになります。

 

しかし、チキさんの優しさはチキさん自身の悲しい過去がもとになっていることを進也はのちに知ることになるのです。

 

神様はチキさんに特別な力を与えて地上に送り出したのですが、その力を使いこなすにはチキさんは心が優しすぎました。現実でも、優しい人というのは損な役回りを引き受けることが多いように感じます。そのことで、私は読後に少し切ない気持ちになりました。