うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

明るい夜に出かけて

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佐藤多佳子、新潮社
☆☆☆
人に体を触れられるのに強い嫌悪感を感じてしまう、大学生の富山(20)が主人公です。

 

富山は大学で交際を申し込まれた女子大生と付き合ってみたのですが、接触恐怖症から、普通の恋人たちがするようなことが一切できなかったため、彼女を傷つけてしまいます。

 

彼女が静かに離れていってくれる女だったら、問題はこじれなかったのですが、その体験を彼女がネットに上げてしまったため、富山は大学内で有名人になってしまい、大学に行きづらくなって、現在は一年間の休学中です。

 

富山は、実家から大学へ通っていたのですが休学を機に、一人暮らしを始めます。それに伴い、始めたのが深夜のコンビニのアルバイトです。

 

この物語では、富山がアルバイトする深夜のコンビニとラジオの深夜番組を介して、夜の街で繋がっていく若者たちを描いています。

 

物語は富山の目線で、口語調で語られていきます。富山の言葉はチョット馬鹿っぽいので、今どきの若者言葉が耐えられない方には不向きかもしれません。

 

コンビニで、富山が深夜ラジオの熱烈なファンと偶然、意気投合する場面以外は、特別なことは何も起こらず、フリーターのような富山の生活がたんたんと描かれるだけの日常系小説です。

 

主要登場人物は4人で、全員、集団行動が苦手で、社会のレールにうまく乗れないキャラクターばかりです。そんな4人が、やっと見つけた共感しあえる仲間と不器用に交流していく姿に心が温まります。

 

私が中高生だったころ、インターネットはなかったので、寂しい気持ちが強まる深夜、ラジオを通じて同じ時間帯に眠らずに起きている同志がいることを確認できた深夜ラジオは心の支えだったのですが、ネットが普及した現代でも、深夜ラジオはその役割を果たしているのでしょうか?