男は敵、女はもっと敵

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山本幸久、マガジンハウス
☆☆☆
題名から、女同士のドロドロした戦いのお話かと想像したのですが、違いました。

 

中身は6章からなっており、それぞれの章の主人公が違います。しかし、短編集ではなく、藍子(36)というフリーランスで映画の宣伝活動をすることで生計を立てている女をとりまく人々の話なので、主人公たちの間に関係はなくとも、藍子と主人公の間には何らかの関係があります。

 

この藍子という女ですが、美人で頭がよく、決断力があって、活動的という、超人的な女です。東京で映画の宣伝という華やかな世界で働き、男たちから称賛を浴びながら、これまで生きてきました。あえて弱点を上げれば、お金がないことぐらいでしょうか。短い期間、結婚したこともありますが、すぐに離婚し、現在は独身です。

 

有能で活動的な女は、恋をたくさんするものです。藍子もこの例にもれず、幾人かの男と関係を持ったのですが、そのことが、各章の主人公たちに影響を与えます。

 

藍子と主人公たちの関係は、藍子の身体から発散される男性集合フェロモンに幻惑された男たちと、その男の妻や恋人である女です。この場合、男を寝盗られた女たちが藍子に復讐しそうなものですが、作中ではそんなことは一度も起こりません。

 

一人の異性をずっと好きでいられる人もわずかながらいますが、多くの人たちは運命の人と思った相手であってもやがて倦怠期が訪れ、別れるときには何の未練もないのが普通だと思います。

 

この物語では、そんな現実を反映し、浮気が発覚したさいには感情を高ぶらせることなく、事務的に事件を処理し、男女の関係を清算しているのが良いと思いました。ドラマチックな恋愛を経験できる人なんて、そうそういるもんじゃありません。

 

都会で繰り広げられる、男女の物語です。それにしても、36歳になっても男性集合フェロモンが出まくりの藍子がうらやましい。