三浦しをん、文春文庫
☆☆☆
東京都、南西部最大の町、まほろ市で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生、行天春彦が転がり込みます。
行天は無一文でしたし、多田は独身で、便利屋も一人でやっていたので、行天を事務所においてやることにします。
具体的に二人の年齢が書かれているわけではないのですが、なんとなく40前後に感じられました。【酸いも甘いも】とはよく言いますが、二人の人生は酸っぱいコトばかりだったようで、二人からは退廃的で、破滅の匂いがします。そんな二人ですから、社会の底辺であえぐ女や、闇社会で生きる男たちが自然と引き寄せられてくるのです。
ただし、きな臭い状況に陥っても、この世に未練がない二人はどこか飄々としていて、清々しささえ感じさせるのです。
便利屋の仕事を通じて、ふだん日の当たらない生活を送っている人々を描いた小説です。作中では6つの事件を扱います。爽快感を感じるようなラストはありませんが、バットエンドは一つもないので、怖がりな人も安心して読むことが出来ます。