うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

ホテルジューシー

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坂本司、角川書店
☆☆☆
卒業旅行の資金を作るために、大学二年生の柿生浩美は夏休みにアルバイトをすることにしました。時間を無為に過ごすことが苦手な浩美は、住み込みのアルバイトをすれば時間が有効に埋まると考え、石垣島のリゾートホテルで働くことにしました。

 

ところが、ずっと石垣島で働くはずだったのに、物語が始まって浩美はスグに沖縄の那覇へやってきます。そして、那覇の繁華街からチョットだけ外れた所にある《ホテルジューシー》で働き始めるのです。

 

《ホテルジューシー》は外観からはホテルであることが分かりづらく、やる気が感じられません。従業員もそれにふさわしい人たちばかり。そんな、知る人ぞ知るロークラス宿泊施設にやって来るお客さんたちも個性派ぞろい。真面目な浩美は、こんな人たちと上手くやっていけるのでしょうか?

 

浩美以外の登場人物は、いい加減な人ばかりなのですが、私は読んでいて安心させられました。

 

私は、20年間、国家公務員として働いたのですが、たくさんいる国家公務員の誰かが不祥事を起こすたびに再発防止策がもうけられ、毎年のように息苦しい職場に変わっていきました。でも、《ホテルジューシー》に集まる人たちは、違法行為であっても他人を悲しませるようなことをしなければ目をつぶってくれる寛容さがあるのです。

 

規則を完璧に守って、健康に悪いことは一切しないで生きるのが好きな人もいますが、そういう人って、たいてい他人にもそれを強要しますよね。そして、弱い人間、だらしない人間に厳しいのが常です。

 

《ホテルジューシー》の従業員たちのように、他人に迷惑をかけない範囲のいい加減さならば、そっとしておいてあげる社会の方が、対人関係のトラブルが少なく、暮らしやすい世の中になると私は思うんですけどね。