鴨川食堂

f:id:asuniwanarou:20180511153601j:plain

柏井壽、小学館文庫
☆☆☆
鴨川流と娘のこいしが、京都の東本願寺の近くで営む食堂に、かつて食べた懐かしい味を再現してもらうためにお客さんが集まってきます。

 

しかし、流の方針で宣伝は行っておらず、店の前には看板さえありません。縁がある人だけが訪ねてくればよいという営業方針で経営している、知る人ぞ知る食堂なのです。

 

作中では6つのお料理を扱っています。ということは、6人のお客さんが鴨川食堂を訪れているのですが、どのお客さんの依頼も難題ばかりです。なぜなら、何十年も昔の記憶をたよりにして、料理の説明をするわけですから、手掛かりが乏しいのです。そんな、なつかしい味を再現するわけですから、これは普通の料理人では無理というものです。そこで、前職が刑事さんという流の力が発揮されるというわけです。

 

とは言っても、警察小説ではないので捜査のシーンはなく、依頼のシーンの後にスグ再現した料理の実食となっています。その中で、謎解きが行われ、なつかしい料理とともに幸せだった頃の記憶が明確に呼び覚まされて、お客さんは温かな気持ちになって家路につくのです。

 

六人のお客さんに共通しているのは、お店にやって来たときには、寂しいとか、悲しいという気持ちを抱えているということです。昔を懐かしむって、そういうことですよね。現在、順風満帆な人は昔を懐かしんだりしないと私は思うのです。

 

一話、40分くらいで読むことができるので、ちょっとした待ち時間に読むのに最適な小説です。