ヒキコモリ漂流記

f:id:asuniwanarou:20181007151701j:plain

山田ルイ53世、角川文庫
☆☆☆
これから引きこもりになる予定の方、今まさに引きこもっている方に絶対読んでもらいたい本です。

 

山田さんが、中学生から6年間引きこもり生活を送り、経済的に独立し、結婚して子供が生まれるまでの自伝です。

 

引きこもり、家庭崩壊、ホームレス生活、食べるものさえない極貧生活など、暗い話題を扱っているのに、山田さん一流のユーモアで笑えるノンフィクションに仕上がっています。

 

文庫版あとがきが、この本のエッセンスだと思ったので、要約して転載します。引きこもり以外の方でも興味が湧いた方は読んでください。

 

・・・あとがき・・・

 

引きこもり関連のインタビューには、お決まりのパターンがあり、その日もご多分に漏れず、記者の口から飛び出した。
「でも、その6年間があったから、今の山田さんがあるんですよね?」
これまで幾度となく耳にしてきた台詞である。
要約すれば、
「全ての時間があなたの糧となったんですよね?」
ということであろう。
実際、引きこもりの話をする際、美談テイストの着地を好む記者の方は多い。僕の経験上、十中八九そうである。
僕も芸能人の端くれである。瞳を輝かせ、
「あの時の経験が、今の自分に役に立ってます!」
とでも返しておけば無難なのは百も承知。
しかし、思ってもいないことを口にするのは寝覚めが悪い。
失ったのは、十代の多感な時期の6年間。
そこで得られる経験値は、質・量ともに膨大である。
大人に置き換えれば、懲役20~30年を勤め上げ、ようやく娑婆に出てきた、といったところか。
僕自身、
「取り返しのつかないことが多すぎる・・・」
との後悔の念が強いのだ。
なので僕は、いつもこう答える。
「いや、あの6年は完全に無駄でしたね」
記者の方は、途端に冷や水を浴びせられたような表情となり、
「そんな風にしか思えないなんて、かわいそーな人」
と、憐れみの眼差しを向けてくる。
どうも、世間の大部分にとって、人生に無駄があってはまずいらしい。
何しろ、本人が、無駄だった、失敗だったと断じていることでさえ、
「そんなことはない!」
「それを糧に成長すればいい!」
と、何が何でも意味を与えようとするのだ。
そんな、無駄を許せない空気感こそが、人々を追い詰めているのではないか。
だいたい、皆が、キラキラした人生を送れるわけではないし、そんな必要も義務もない。
全員が何かを成し遂げ、輝かしいゴールを切ることなど不可能である。
「人生では、自分が主人公だ!」
確かにそうだが、ハリウッドの超大作映画と大学生の自主製作映画では、同じ主演でもギャラは随分違うだろう。
「ナンバーワンでなくても良い。オンリーワンであれ!」
素晴らしい。
しかし半面、
「オンリーワン・・・結局、何かしら特別でないと駄目なのか・・・」
と恐ろしくもなる。
ほとんどの人間は、ナンバーワンでも、オンリーワンでもない。
本当は、なんの取り柄もない人間だっている。
無駄や失敗にまみれた日々を過ごす人間も少なくない。
そんな人間が、ただ生きていても、責められることがない社会・・・それこそが正常だと僕は思うのだ。