うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

彼女に関する十二章

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中島京子中央公論新社
☆☆☆
題名になっている《彼女に関する十二章》は1954年にベストセラーになった伊藤整の著作だそうです。

 

そして、主人公は宇藤聖子(50)です。子育ても終わり、夫と二人で暮らしています。暇つぶし程度に事務のアルバイトをやっています。

 

聖子が《彼女に関する十二章》に興味を持って読み進めるのと同時進行で、平穏な日常の生活が描かれます。その中で、

 

「そう言えば、《彼女に関する十二章》の中でコレに関係するようなことが書いてあったな」

 

と思い出す感じで物語が進んでいきます。

 

強烈なキャラの脇役はいないのですが、チョットだけ変わった人が数名登場します。しかし、常識人である聖子はそんな人たちとも上手くやって行く処世術を身に着けているため、事件と呼べるようなことは作中で起こりません。

 

でも、私は退屈を感じることなく最後まで読み終わることができました。体験したことに対する聖子の感じ方に私が共感することができたからです。それも、ごく普通の人が体験しそうな出来事ばかりですから、たいていの読者は「私なら、どうだろう?」と自然に考えられるはずです。

 

未来のことは誰も分からないから、今日できることを丁寧にしたあとは、
明日は明日の風が吹く
と考え、サッサと寝てしまうところや、

 

【人間は正しいことだけして生きられない】
と考えて自分の失敗をいつまでも後悔しないようにしたり、他人に寛容な態度をしめすところなどは、50年生きたら身に着けたい処世術だと勉強になりました。