百田尚樹、講談社文庫
★★★
想像ですが作者の百田さんはテーマを決めるとそれに関連する資料を集められるだけ集め、読破しているのだと思います。そして集められた資料はまるで蒸留装置のようになった百田さんの頭の中で不純物が取り除かれ、したたり落ちたエッセンスが小説になっているのだと思います。これはそんな風にして書かれた小説です。
マリアは擬人化されたスズメバチです。わずか30日の命を燃やして激しい生存競争を懸命に生きます。その一生は戦いにつぐ、戦い。激しい競争の中で生きる方々が自分自身と重ね、折れそうになった心を奮い立たせるために読むことをお勧めします。
また、その行動は科学的に観察された事実に基づいたものなのでスズメバチのライフサイクルに興味がある人が知的好奇心を満たすために読んでも満足できるものになるでしょう。スズメバチの生涯はとても不思議で神秘的です。