市川拓司、小学館
☆☆☆
現在、私たちが暮らしている世界は優と雪乃にとって、とても生きにくい世界です。彼らの目には人々が自分の欲望をもてあまし、お互いに傷つけあっているように見えています。悲しい現実を目の当たりにするたび、彼らは
「優しくないね」
というのが、口癖です。
愛し合ってはいても、遠く離れて暮らすことになってしまった優と雪乃。そんな世界に終末が訪れます。鉛色の雲から原因不明の青い光が地上にさし込みます。その青い光を浴びると、生き物は命を失って彫像のように固まってしまうのです。
青い光は人口密度が高い大都市から、過疎の村へと範囲を広げていったので、世界の人口は急速に減少し、公共サービスはあっという間に麻痺しました。
さて、そんな世界の終末が訪れたらみなさんはどうしますか?この世界の人々は、どうせ悪あがきしてもたかがしれているんだから、残された人々で助け合って、毎日を穏やかに生きよう、と思うようになるのです。
終末を迎えて優しくなった世界で、優が雪乃に会いに行くため旅に出ます。旅で出会う困難が、優が雪乃を思う気持ちを試すように襲ってきます。青い光が世界を覆い尽くす前に二人は再会することができるのでしょうか。
最後に残念に思ったことを書きます。優が雪乃を思う気持ちを旅の苦労で表現したかったのでしょうが、とりたててドラマチックなことも起こらない旅の話しが長々と続くのは退屈でした。無理して文字を書き連ねて413ページの長編小説にするよりは、300ページくらいにまとめた方が話しが中だるみしなくて良かったと思います。