水原佐保、角川書店
☆☆☆
題名に《青春俳句講座》とありますが、中身はミステリーです。人が殺されたり、暴漢が襲ってきたりということは微塵もなく、小説の中であっても暴力は苦手、という方にも安心なミステリーです。
どんな謎が登場するかといいますと、試験で主人公がカンニングされました。誤答の内容、空欄にした箇所まで全く同じです。丸写しされたことは明らかです。しかし、カンニングをした生徒は同時刻に違う会場で試験を受けた生徒だったのです。こんな感じの謎が他に2つ登場します。
主人公の水原さとみは高校に入学したのを機に近所にある俳句の会に入会しました。会を主催しているのは若い男の花鳥先生。花鳥先生は俳人としても実力者なのですが、その人柄がとても良いので、先生の自宅には用事もないのに個性的な門人たちが先生を慕って集まってきます。さとみも俳句の採点をしてもらう傍ら、身の回りの出来事を先生に話します。すると、先生はさとみが出会った謎を解くヒントをさとみに教えてくれるのです。
さとみの花鳥先生に対する言葉使いがとっても丁寧で、ちょっと現実味がないようにも感じましたが、言葉を大事にする俳句に打ち込んでいる女子高生という設定なので、
「日本中探せば一人か二人はいるかな」
と納得して読み進めました。
俳句教室を舞台にするだけあって、謎解きの他に、季節の移り変わりに関することや、自然の美しさを言葉で表現する方法について紙面をさいているので、一般の人が見落としてしまっている身の回りのできごとを俳句をたしなむ人たちがどんな風に感じているかが分かるようにもなる一冊です。