門井慶喜、光文社
☆☆☆
美術犯罪を専門に取り扱う、たった2人の部署が活躍する警察小説です。5つの短編が納められていますが、すべてが
美術犯罪捜査班 VS 美術品販売会社天翔堂
との戦いとなっています。キャラ設定がきちんとお約束にかなっているので、安心して読むことが出来ます。
岸すみれ(30):豪気の上司で有能な美人刑事。美術大学を卒業し、美術に関する膨大な知識を持つ。
三田村豪気(27):希望していた刑事にやっとなることができて、はりきっているが美術の知識は全くない。やる気が空回りして、いつもドジを踏んでしまう。
大迫龍次(30):天翔堂社長。イケメン、お洒落、頭脳明晰、お金持ち、話術に優れ、犯罪スレスレの美術品販売を精力的に手がけている。すみれの元夫であり、美術大学時代の同窓生。
どの短編も美術に関するトリビアが鍵となって、事件解決へ結びつきます。その様子をすみれが先生、豪気が生徒という関係になって描かれています。
心に残ったトリビアは、自分で自分の贋作を作った画家の話です。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、自分が描いた絵を本人が、
「アレは俺が描いたもんじゃない!」
と言い張って、絵の持ち主と訴訟になり、敗訴して、罰金を払った画家が本当にいたそうです。それも、無名の画家じゃなく、私でも知っている有名な画家だったので、「へーっ!」となりました。
警察小説ですが、扱っているのが美術品の販売に関するトラブルなので暴力的なシーンはありません。美人敏腕刑事とドジな部下が活躍するちょっとコミカルなお話です。美術のトリビアも身につきます。