池上彰&佐藤優、文春新書
☆☆☆
現在、世界的な問題になっている事件を過去にさかのぼって、起源をやさしく解説してくれる本です。
かと言って、昔のことばかり扱っているかというと、そんなことはなく、お二人のコネクションを利用して集めた最新の情報も対談に盛り込まれているので、将来のことを考えるのにも役立ちます。
私は、現在、中東で起こっていることは、第一次世界大戦後にヨーロッパの国々が勝手に築いた秩序が、その影響力の低下に伴って崩壊を始めたのだと思っているのですが、著者のお二人も同様の考えをもたれているようで、
『私の見立ても大したもんだ。』
と誰かに自慢したくなりました。
かつて、帝国としての栄光をもつ国の中には先祖返りのような動きをしている国があるというお話も興味深い内容でした。たしかに、ロシア、中国、トルコの国家元首はツァーリ、皇帝、スルタンと呼んだ方がしっくりくる方々ですよね。21世紀になっても、民族の行動様式というものは簡単に変わらないということでしょう。
対談されたお二人の読書量と知識の蓄積にはただ舌を巻くばかりなのですが、佐藤さんは、ちょっと前にベストセラーになった
【学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話】
までお読みになっていて、佐藤さんにしかできない切り口で論評していたのも興味深かったです。
テレビや新聞の解説だけでは満足できない方が、時事問題をより深く考えるために役立つ一冊です。