うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

わたしたちはまだ、その場所を知らない

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小池昌代河出書房新社
☆☆☆
とても静かな物語です。

 

主な登場人物は2人。

 

一人は中学校の女性国語教師、サカグチ。作中で具体的な設定は書かれていないので想像ですが、30歳前後の美人。学校の廊下を背筋を伸ばして、大股で颯爽と歩いています。

 

もう一人は女子中学生、ヤマダミナコ。クラスでどのグループにも属していないが、イジメられているわけではない。一人でいることは苦にならないが、話しかけられれば普通に会話もできる。

 

その他にサブキャラが数名登場しますが、物語の流れを変えてしまうようなサブキャラは一人も現れません。

 

物語は登場人物の会話以外は、第三者の目で語られています。たとえば、

 

『サカグチの目がぱっと明るくなった』

 

みたいに、まるで読者が透明人間になって、物語の中にいるような気分にさせられます。

 

二人の世界はとても狭く、物語で登場するのは学校と図書館と喫茶店だけです。

 

二人は詩の読者であり、作り手でもあるので、いつも自分の内面を静かに見つめています。実際にクラスメイトになったらミステリアスな印象を与える少女と教師だと思います。

 

文章は古風な印象を受けますが、読みやすいです。娯楽小説ではありませんが、読んでいて重苦しくなるようなテーマは扱っていないので、気軽に読み始めて大丈夫です。

 

ここまで書いて、読み返してみると何のことやら分からない書評になってしまったと困ってしまったのですが、【詩】を書くような人たちが普段の何気ない日常の中でどんなことを考えているのか分かる本だと思っていただければよいかと思います。

 

私は中学生時代、周りの目ばかり気にしている人間でした。だから、一人で超然と存在するミナコに共感はしなかったけれど、

 

「そういえば、クラスにミナコみたいな子もいたなぁ」

 

なんて思い出しました。

 

中学生だった私は、望めば何にでもなれる気がしていて、外の世界ばかりに目が向いていて自分の内面を見つめることは少なかったように思います。意識して探せば、ミナコみたいに自分の内面を静かに見つめて、それを日本語で表現することに格闘していた少女もいたんでしょうね。