小路幸也、中央公論新社
☆☆☆
限界集落まであと一歩、というところまで寂れた集落によその土地で人生に行き詰った人たちが不思議な縁に引き寄せられて集まってきます。
核になっているのは土方あゆみ、30歳、独身。東京で働いていたけれど、色々あって故郷に戻ってきました。あゆみはアルバイトで町の地域おこしをしていることと、もともと持っていた人望で人を引き寄せます。
普通、充実した人生を送っている人間は、わざわざ不便な限界集落に移住しようなんて考えませんから、集まって来る人はワケありな人ばかりとなります。ワケありな人間と言っても、集まって来る人に犯罪者は含まれていないので安心して下さい。集まってくる人は、心に傷を負って社会にうまく適合できなくなった人たちです。
そんな色々な過去を背負った人たちが、何にもないけれど静かでのんびりした集落で助け合いながら、ゆっくりと再生していく物語です。
この小説は、あゆみが取り組む町おこしの方にはウエイトが置かれていないため、紙面があまり割かれていません。紹介されている事業は、光ファイバーを敷く、空き家をリフォームする、レジャー施設を建設するといったどこでもやっていることなので、お仕事小説として読むのには物足りないと思います。
こんな風に、傷ついた人たちを優しく迎え入れてくれる静かな集落があったらイイなぁ、と思いました。