私はうつ病になってから、光、音、臭いなどの刺激に弱くなってしまい、そういった物から距離を置くようになりました。そのため、音楽はまったく聞かなくなりました。
しかし、近所のリサイクルショップで太田裕美さんのベストアルバムを見つけてしまい、懐かしさのあまり買って帰りました。CDを買うなんて、数年ぶりのことです。
彼女は歌声が綺麗なので、私はこれまで歌詞をよく理解せずになんとなく聞き流していたのですが、じっくりと聴いてみると暗い内容の歌詞が多いことに驚きました。でも、かつては中島みゆきさんのファンでもあった私は暗い歌詞大歓迎なのです。
その中に、《僕は君の涙》という太田裕美さんが作詞・作曲を手掛けた曲があり、とても気に入ったのですが、
「これは、アボガドロ定数の話だ!」
と思ってしまって、誰かに話したくてたまらなくなりました。
歌詞の内容をザックリ説明すると、何か悲しいことがあった女性が涙をこぼします。その涙が、巡り巡ってワインになり、笑顔を取り戻した女性が飲む、というものです。
これって、非現実的な話に思えますが、大学受験で化学を選択した人なら、
「そういうこともあり得るよね」
と思えるのです。
アボガドロ定数の話から説明を始めると長くなるので結論だけ言ってしまいます。
コップに180mlの水があります。この水が地球上に存在するすべての水と十分に混ざりあって均一になった後、ふたたびコップに180mlの水をくんだとき、このコップの水の中に最初のコップの水に含まれていた水の分子はいくつあるでしょうか?という化学ではおなじみの問題です。
答えは、約780コです。
だから、悲しくて流した涙がワインになって戻って来るというのは荒唐無稽なお話じゃないのです。まぁ、こんなこと知らなくても《僕は君の涙》はとても良い曲なので興味が湧いた方はぜひ聴いてみて下さい。