高樹のぶ子、文藝春秋
☆☆☆
主人公は高畑明日香(22)。短大を卒業後、薬師寺で非正規職員として働いています。
明日香の愛読書は《日本霊異記》です。日本霊異記は奈良時代の終わりから、平安時代の始まりにかけて活躍した景戒というお坊さんが、当時巷で語られていたお話を収集して編纂した仏教説話です。
仏教説話なので説教臭いところはあるのですが、オカルトみたいな奇妙な話がたくさん収められているのと、千二百年前の日本の地名が記されているのが明日香にとってはたまらなく面白いので、繰り返し読み返しているのです。
そんな明日香が物語の中で6つの不思議な体験をします。超常現象と言っても良いかもしれません。かなり重大な案件もあるのですが、警察に相談するのはためらうようなことばかりなのです。
しかも、日本霊異記を暗記するくらい読み込んでいる明日香には事件が違った様相を呈して見えるのです。
「これって、日本霊異記に同じような事件が出てたわ!」
となるのです。
舞台は奈良県奈良町。かつては都がおかれていた古い土地には、たくさんの人や神様たちの体が滅びた後も情念となって土地に残っています。千二百年もの時を超えて、明日香に訴えかける情念とはどんなものか、そして、明日香は超常現象の謎を解くことが出来るのでしょうか。