香月日輪、新潮文庫
☆☆☆
小学生高学年から読むことができる児童書です。
直之は大阪から東京へ転校してきた6年生です。小さなころに大病したせいで、体が小さくて、方言がぬけなかったので、クラスのいじめっ子に目をつけられて毎日絡まれていました。
直之はやられた分はキッチリやり返す主義なので、学校でペシャンコになることはなかったのですが、いじめっ子に目をつけられている直之と友達になってくれる子供はおらず、学校に居場所はありません。
では、家ではどうかというと、母親がいなくて、厳しいおばあちゃんが待っている家も居心地がよくありません。優しいお父さんは、いつも残業で帰って来るのが遅くて、頼りにならないのです。
そんなわけで、直之は学校が終わると夕ご飯まで、街をあてどもなく歩いて時間をつぶしていたのですが、ある日、今まで見たこともない昔懐かしい下町に迷い込んでしまうのです。そこには、直之が師匠と呼ぶことになる年齢不詳の着物姿の男とこの世のものではない不思議な仲間たちが暮らしていたのです。
つらい現実の中で、優しくて思慮深い師匠とその仲間たちの力を借りながら直之が成長してゆく物語です。とまどうことはあっても、最後には問題に体当たりしていく直之のまっすぐな姿勢に元気がもらえるはずです。