小路幸也、宝島社
☆☆☆
主人公は竹内朗人(20)、大学生です。朗人には5歳年上の姉、美笑がいます。二人は都内で実家を離れて一緒に暮らしています。
題名の通り美笑はプロの小説家で、ジャンルでいうと日常系小説を書いて生計を立てています。
そして、この本も日常系小説で、
『そういうこともあるかもな』
と思うことしか起こりません。ただ、日常系小説の中で、日常系小説を書く小説家が動いているというのが、おもしろいと感じました。
しかし、そこはやはり小説ですから、読者を退屈させない工夫がこらしてあります。美笑には秘密があって、登場人物たちは、一人、一人とその可能性を疑うようになっていくのですが、一番最後に気づくのが皮肉にも一緒に暮らしている朗人です。この辺の秘密を匂わせる小さな事件が小出しに出てくるので、朗人よりも先に気がつけるか試してみるのもおもしろいと思います。
日常系小説として読んでも十分おもしろいし、推理小説の要素もオマケでついてきて、お得な小説です。