宮下奈都、実業之日本社文庫
☆☆☆
《よろこびの歌》の続編で、3年後の世界を描いています。一作目が好評でも、続編で残念な気持ちにさせられるものもありますが、《終わらない歌》は大丈夫です。《よろこびの歌》を面白いと感じた方は、ぜひ読みましょう。
6章で構成されており、最初の章と終わりの章の主人公を御木元玲が担当しており、残りの4章は別の女の子のお話になっています。
女子校で高校生だった女の子たちは卒業してバラバラになり、それぞれが選んだ進路先で試行錯誤しています。順風満帆な女の子は一人もいません。
文庫本のカバーに【音楽小説の傑作】と宣伝文句が記載されています。御木元玲は音楽大学に進学して、自分に才能がないことに気が付いて悩んでいますが、音楽とは無縁の進路を選んだ子も主人公となって登場するので、一冊丸ごと音楽小説というわけではありません。
それでも、十代後半から二十代初めに誰もが通り過ぎる、自分の可能性を試す姿が、49歳の私にはまぶしく感じられて素敵でした。御木元玲が、友達に夢とか希望といったものについて持っている考えを伝えるシーンが感動的なので、以下に書き写します。
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夢は遠い。希望は儚い。どんなに手を伸ばしてもつかめないかもしれない。夢も希望も、挫折や絶望のすぐそばにある。もしかしたら、欲しがらないほうがいいのではないか、希望など初めからないほうがよかったのではないかと疑いながら、それでも希望を持たないわけにはいかない。夢に向かわずにいられない。
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才能って、ある程度時間をかけて試してみないと、あるのか、ないのか、分からないから厄介なんですよね。そして、才能が花開く人はほんの一握り、自分に才能がないと気づくのには5~10年かかるんじゃないでしょうか?そのときから、平凡な人生に戻ろうとしても厳しい現実が待っていると思います。玲の言う通り、
【夢も希望も、挫折や絶望のすぐそばにある】
というのは、真実なんでしょう。そういった試練をくぐり抜けてきた人たちが産み出す芸術だから、凡人たちが感動するんでしょうね。