うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

ロマンシエ

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原田マハ小学館
☆☆☆
まず、《ロマンシエ》とはフランス語で、和訳すると《小説家》です。

 

主人公は遠明寺美智之輔(24)です。美智之輔は美大生だったのですが、父が有力政治家だったため、卒業するとスグに政略結婚する予定でした。

 

ところが、間一髪で卒業制作の絵が美大で最優秀賞に選ばれ、副賞のパリ留学を手に入れてパリへ逃げることに成功します。これは、そんな美智之輔のパリでの生活を描いた物語です。

 

ここで、美智之輔の特徴について触れます。美智之輔は美男子なんだけど自分の性に違和感があり、幼いころからズボンよりスカートがはきたい男の子でした。思春期になってからの初恋の相手は男の子で、この頃には自分は周りの男子と違うことをはっきり意識しました。しかし、超保守的で厳格な父親の存在が大きい遠明寺家ではカミングアウトすることが出来ず、現在まで男性として生活しています。

 

一時的に政略結婚を回避した美智之輔ですが、留学には期限があります。父親の支配から完全に逃げ出すためには天職と信じる絵描きとして経済的自立を成し遂げる必要があるのですが、それは簡単なことではありません。99%の美大生は製作活動を諦めて美大で身に着けた知識を生かした職業に就くのですが、美智之輔は強運の持ち主だったのです。いくつもの偶然を手繰り寄せ、夢をかなえていきます。

 

昨今のパリは何万人もの怒った労働者たちがデモをして、高級ブランドショップが暴徒たちから焼き討ちにされる物騒な街のイメージがありますが、作中のパリはお金持ちが美食と恋愛を楽しみ、いたるところに芸術があふれる美しい街として描かれています。

 

美智之輔も明るく元気なオカマとして描かれていて、物語から湿っぽい感じはしません。それどころか、明日は今日よりイイ日になると信じる若者らしさがあふれていて、傷心に泣く日があっても数日後には乗り越えて夢に向かって突き進んでいます。

 

「《小説家》はどこに出て来るの?」、ですって?それがこの物語の一番重要な部分なんだから、気になる方はご自身で読むよりありません。

 

高倉健さんの名言、
【人生は、誰と出会うかで決まる】
って、本当ですよね。