朱野帰子、講談社文庫
☆☆☆
テレビドラマでは、若くて、きれいな女優さんを主役にした成長物語というジャンルがあり、毎シーズンどこかのテレビ局でひとつは放送されるものです。この物語はその原作にピッタリの本です。
主人公は若菜直(わかななお)です。難関大学を卒業後、現実社会でいうところのJR東日本に相当する東本鉄に入社します。
直は大学生のときに東京駅で意識を失い倒れたのですが、その際に駅を行きかう人たちに介助されたことから、駅という場所に思い入れを持つようになります。
東京駅に配属されて介助してくれた人たちに会って直接お礼がしたい、そして、自分も駅を利用する人たちを手助けできたら、と考えて東本鉄に就職するのです。
巨大組織で入社1年目が結ぶ人間関係となると、同期と教育係の先輩とのかかわりが主だと思います。そのため、主要な登場人物は20代となり、困難を乗り越え、成長していく若者の物語となるのは自然な流れでしょう。
直に深く関わる男性社員も二人いるので、これにイケメンをキャストすればテレビドラマとしては鉄板の布陣だと私は思うのですが、どうでしょうか?
コメディ要素は無くて、終始シリアスな話です。何の落ち度もないのに客から暴力を振るわれたり、人身事故の復旧活動でメンタルに不調をきたして休職する同期の話など、乗り越える困難はなかなかハードです。
「駅員って大変だなぁ」
なんて思いながら読ませていただきました。
私は20代前半の女優さんに詳しくないので、誰をキャストすれば適当なのか判断できないのですが、詳しい方ならその女優さんを思い浮かべながら読むと楽しさが増すと思います。