うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

十字軍物語 二 イスラムの反撃

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塩野七生新潮文庫
☆☆☆
十字軍物語の2巻目です。

 

第一次十字軍でリーダーを担ったヨーロッパ人が皆この世を去った1118年からお話が始まります。

 

塩野さんも不思議がっているのですが、第一次十字軍ではキリスト教側に人材が輩出したのですが1118年を境にそれがパタリと止んで、今度はイスラム教側に人材が湧き出します。

 

歴史上いくつもの国が興亡したわけですが、衰退していく国家というのはどこも似たり寄ったりで、第一次十字軍によって生まれた十字軍国家も例外ではありませんでした。

 

高い地位にある人というのは競争を勝ち抜いた人なのだから優秀なはずなんですが、現実にはそうでもないんですよね。第一次十字軍によって獲得した領土を守るには不足していた兵力を補う目的で編成された第二次十字軍の指導者たちは凡庸な人ばかりで、彼らがもしも士官学校の生徒であったなら絶対に落第です。

 

凡庸なリーダーに率いられた第二次十字軍はイスラム教徒たちに、

 

『なんだ、十字軍って弱いじゃん』

 

という意識を植え付けただけで、故郷へと帰国してしまうのです。

 

実は、2巻が面白くなるのはココからです。兵力不足は解消せず、イスラム教徒からは軽くみられる状態になった国をどうやって守って行くのか見ていきましょう。

 

基本的にキリスト教側はやられっぱなしなんですが、魅力的な人物が一人だけ登場します。ライ病に侵されたイェルサレム王のボードワン四世です。そして、2巻の主役は間違いなくイスラムの英雄サラディンです。

 

サラディンって名前は聞くけど、どんな人?』

 

って日本人が多いと思うのですが、そんな方はぜひこの本を読みましょう。イェルサレムを陥落させた後にとった彼の行動は暴力が支配していた中世にあって奇跡的なことです。第一次十字軍がイェルサレムを陥落させたときと対比すると雲泥の差です。

 

また、戦術、戦略ともに優秀で、歴史上ハッティンの戦闘と呼ばれる戦いはサラディンが軍人として優秀であったことを証明しています。

 

現在、治安が極度に悪化して国際問題になっている中近東地帯を語るとき度々出て来るキーワードに【クルド人】がありますが、サラディンクルド人だったことも興味深く思いました。

 

本の最後は、ライオンハートのあだ名で知られるリチャード一世がイギリスを出発し、第三次十字軍としてイェルサレムを目指すところで終わっています。

 

リチャード一世 VS サラディン

 

ここにきて役者がそろった感じでワクワクします。3巻も読まなければ!