加藤浩子、中経出版
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音楽家ヴェルディが遺した老人ホームについて書かれた本です。
ヴェルディは経済的に困窮し、みじめな老後を送る音楽家が多いことを知り、自分の財産を使って老人ホームを建てました。
だから、入居資格は音楽家だったことです。入居に必要なお金は、もらっている年金の八割で、具体的にいくら払え、というのは決まってないそうです。そのため、少ししか年金をもらっていない人でも入居可能です。
音楽家ばかりの老人ホームですから、いつもあちこちで楽器の音や歌声が響いていて、活気に溢れています。普通の老人ホームでは考えられないことです。
入居者のインタビューが多数載っているのですが、みんなに感じるのが、生涯を通じて打ち込むことのできるものに巡り会えた幸せです。長く生きても、打ち込むことに出会えない人もたくさんいますからね。
それと、入居者たちは音楽を通じて同士とも言える関係なので、打ち解け合うのも普通の老人ホームよりも容易だそうです。たしかに、老人ホームに入っても現役時代の肩書を振りかざして自慢してしまう困った老人が少なくないとか、《音楽家限定》の老人ホームならばそういった不愉快な人と生活しなくてすむかもしれません。
成功して巨万の富を築く人はいますが、ヴェルディのように百年後にも遺る老人ホームを作った人は他にいないのではないでしょうか?世間では、金持ちというだけで尊敬の対象になりますが、本当は、その金持ちが何にお金を使ったかで評価されるべきと思います。そういう意味では、ヴェルディは最高に素晴らしいお金の使い方をしたと思います。
最後に、この本の中では認知症の老人を【痴呆老人】と記述しているのですが、【痴呆】というのは蔑視を含む言葉で、随分昔から新聞などでは使わなくなった言葉です。私のブログは一日の閲覧数が約20PVという辺境のブログなのでこの本の関係者がこの指摘に気づくことはないと思いますが、万一見て下さったら、訂正されることを勧めます。