うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

蜜蜂と遠雷

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恩田陸幻冬舎
☆☆☆
日本で行われる国際ピアノコンクールを題材にした物語です。

 

物語の視点が様々な人の目線で語られるので、主人公を一人に絞るのは不可能だと思います。きちんと数えてないのですが、パッと思いつくだけで、

 

コンテスタント・・・4人
コンテスタントの友人・・・1人
審査員・・・2人
報道関係者・・・1人

 

の目線でコンクールを語ります。

 

ピアノコンクールを題材にした小説、ドラマ、漫画は過去にいくつも作られました。その中には、自分の成長によって優勝を狙うのではなく、ライバルに意地悪して勝とうとする場合もあります。しかし、本作品は優勝候補の三人が非常に仲が良く、休憩時間に三人でなごやかに浜辺を散歩したりします。実写映画のテレビCMで、

 

【これはピアノの決闘だ!】

 

なんてキャッチコピーを使ってましたが、原作からはそんな雰囲気は感じられません。ドロドロした話が苦手な方にも安心して勧められます。

 

物語を語ることになるコンテスタント四名のうち、三人が世界一になる実力を備えたピアニストで、残り一人は日本一にならなれるピアニストという設定です。

 

そのため、必然的に天才たちの物語になっており、神様に愛された人と、そうでない人について考えさせられます。作中で、《ギフト》という言葉が多用されていますが、ギフトには贈り物という意味の他に《才能》という意味もあるのです。どんな分野でもいえることですが、世界一になるためには努力だけでは不十分で、才能を神様から与えられていないとダメなんですね。

 

また、クラッシック音楽でプロになるまでには途方もない教育費がかかるということも繰り返し語られていて、この辺りは音楽が好きだけど、お金がなくて音大進学を諦めた人たちには身につまされるお話です。

 

この本は本屋大賞を取ったので、たくさんの人が読んだと思います。その人たちのほとんどがなんの取り柄もない凡人だと思うのですが、そういった一般大衆から天才たちの物語が支持され、繰り返し生産される理由は何なんでしょう?スターとか、カリスマとか、そういったものに全く興味がない私には理解できないので、興味深い考察のテーマであります。