山本甲士、ハルキ文庫
☆☆☆
主人公の青葉一成は物語の冒頭でいきなり、早期退職を勧告されてしまいます。しかし、ずい分前から会社が傾いていたのは知っていて、コネを頼りに転職活動をしていたので、あっさりと受け入れて退職します。
友人の誘いで転職した会社には課長ポストで迎えてもらえるはずでした。しかし、転職する直前に転職先で派閥抗争が勃発、一成を採用した社長は追い出されてしまい、新社長は前社長の決めたことをひっくり返してしまいます。一成は本社の課長ではなく、地方都市の郊外にある倒産しそうなスーパーの副店長を命じられます。ここからが物語のスタートです。
崖っぷちの組織に活気があるわけがなく、一成は暗い気持ちになるのですが、この場所を失ったら後がありません。やる気を振り絞って新しい企画を提案していくのですが、どうなるかというのが物語の本筋です。
自分の失敗を絶対に認めずに責任を部下になすりつける経営幹部、真っ先にリストラ候補に挙げられる中間管理職の姿など、物語の前半ではサラリーマンの悲哀が描かれるのですが、後半からは幸運が一成に次々と訪れて人生が開けていきます。
具体的には良縁に恵まれるのですが、これって大事なことだと思います。実際に成功した人生を送った方にインタビューすると人生を好転させる出会いがあったとおっしゃる方が多いと思いませんか?人生を成功させるためには、努力と才能だけじゃ足りないんです。【運】も絶対に必要です。
他にも、地方都市の買い物事情が書かれていて、さいたま市で暮らしている私は「へーっ」とうならされたり、スーパーの活性化のために店内にピアノを置くアイデアなんか面白いと思いました。
ヨーロッパの駅や空港には誰でも弾いてよいピアノがあって、人を集めるのに一役買っています。この様子をNHKが15分くらいの番組にして深夜に放送していて、私は楽しみにしているので、こんなお店が実際にあったらイイなと思いながら読みました。
良縁が次々と訪れる夢のある物語です。