あさのあつこ、徳間文庫
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結婚してから15年が経ち、夫との間もすっかり冷めてしまい、中学生の長女は反抗期、専業主婦の佐伯美菜子を褒めてくれる人は誰もいません。そんな生活が続けば自信を失っていくのは当然です。
「なんの取り柄もない私に勤まる仕事はあるだろうか?でも、こんな生活がずっと続くのは嫌だ」
と思い悩み、ポストに入っていた求人広告を見て、ハウスキーパーの会社の面接を受けます。
面接は大成功で、即戦力として採用され、お客さんのお宅へ出かけることになるのです。しかし、そこには普通ではないお客さんが待ち受けていて、美菜子は思いもよらない事件に巻き込まれ、仕事仲間とともに事件解決のため捜査をはじめるのです。
あとがきを読んで知ったのですが、こういった日常にからむミステリーで、残虐な場面や過激な描写がない小説をコージー・ミステリーと言うそうです。
あさのあつこサンの本を何冊か読ませていただきましたが、ミステリーは初めてだったので、
「はぁ、あさのあつこサンはミステリーも書けるのか。才能がある人は何でも出来ちゃうんだな」
と感心させられました。
ミステリーの方もおもしろいのですが、美菜子と同じような気持ちで就活し、3百通を超える不採用通知を受け取った私としては、職場の仲間やお客さんから肯定的な言葉をかけてもらううちに自信を取り戻していく美菜子の変化に心を動かされました。
誰からも褒められないのに自信満々の人っていますが、やはり、普通の人は他人から必要とされないと自分の価値を確認できないと思うのです。この本を読んで、そのことを確認しました。