うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

永遠も半ばを過ぎて

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中島らも、文春文庫

☆☆☆

中年の男二人が主人公のコメディ小説です。

 

まず一人目は、詐欺師の相川です。若いころには中小企業の社長をしていたのですが、詐欺師に騙されて会社を倒産させます。しかし、悔しいという思いよりも詐欺師の鮮やかな犯行にほれぼれとしてしまい、自身も詐欺師になった男です。

 

もう一人は、フリーランスの写植屋の波多野です。今では、他人の手書きの文字を見ることなんて滅多にありませんが、この本が書かれた当時は手書きの文字をテキストファイルにするために、ひたすらキーボードを打つ職業が存在しました。それが、写植屋です。

 

波多野は独身で独り暮らしです。そこへヤクザに追われた相川が逃げ込んで来てお話が始まります。

 

運が悪ければ殺されていたかもしれない経験をした相川ですが、まったく懲りていません。次に騙す相手を求めて動き出します。波多野はそれに巻き込まれる形で詐欺の片棒を担いでしまいます。しかし、騙そうと思って近づいた相手の方が一枚上手だったら、、、どうなるんでしょう?

 

「お酒がご飯で、クスリがおかず」

 

と生前おっしゃっていた中島らもサンです。作中には連続飲酒や向精神薬が登場します。

 

中島らもサンは躁うつ病で合法の薬から違法な薬まで色々と試されていたようです。昭和のころの小説家には、こんな破滅型の人がたくさんいたのですが、今はすっかり見なくなりました。新聞や雑誌でインタビューを受ける人気作家さんたちは、みなさん爽やかで洗練されたお洋服を着ていて、退廃的なにおいがする人は一人もおりません。

 

中島らもという人は、昭和という古き良き時代がなければ活躍できなかった人だと思っています。