原田ひ香、実業之日本社文庫
☆☆☆
新宿から私鉄に乗って15分、駅から続く商店街の真ん中あたりにそのお店はあります。
朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナック...朝、昼、夜で業態がガラリと変わるそのお店の名前は通称《三人屋》。
やって来るのは、三女に一目ぼれしたサラリーマン、出戻りの次女に恋する鶏肉店主、女泣かせのスーパー店長など、一癖ある常連客たちです。
5つの章から構成されていて、各章は《三人屋》に縁のある人を一人取り上げて、その人物を通して三姉妹の現在と過去を描いていきます。常連客たちはワケありですが、三姉妹もワケありです。
三姉妹は生まれたときからこの界隈で暮らしているため、人間関係が煮詰まっているのですが、それでも肩を寄せ合って暮らしている商店街の人々の姿に色々と考えさせられました。長く人間関係を維持していくために一番大事なことは、失敗した人を許すってことでしょうか。
誰もが夢や理想を持っているわけですが、才能や運といった本人ではどうにもならないことで翻弄される人生を上手に描いていると思いました。