うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

メガネと放蕩娘

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山内マリコ文藝春秋

☆☆☆

地方のシャッター商店街を舞台にした物語です。

 

主人公のタカコは33歳、独身、市役所勤務。実家は商店街の中にある本屋で、一階がお店、二階が住居スペースになっています。

 

平凡な日常が前触れもなく壊されます。17歳のときに出奔した妹が、10年ぶりに突然、父親の分からない赤ん坊を抱いて帰宅するのです。両親、タカコが驚いている中、妹は、

 

「なんでこんなに商店街が寂れているの!」

 

と憤慨して物語スタートです。

 

地方再生の物語なんですが、安直な、《努力》、《友情》、《歓喜のフィナーレ》みたいなお話ではありません。もっと読みごたえがあります。

 

地方の商店街は昭和時代に繁栄していたんですが、主に2つのことが原因になって没落しました。

 

①車社会の到来
大規模小売店舗法が2000年に廃止

 

没落の原因が明確なのだから、対策を考えて反転攻勢したら良いのに、と思うのですが、この本を読むと、

 

「へ~っ、そんなことがあるのか!」

 

と唸らされることがいくつもあります。全部ここでばらすと、これから読もうと思っている人に申し訳ないので、私も心当たりがあったことを一つ書いておきます。

 

私が、東北のある県へ出張で出かけたとき、県庁の職員と夕食を共にする機会がありました。そこは、県庁所在地だったんですが寂れていて、そのまま口にするのがためらわれたので、

 

「静かで良い街ですね」

 

と言ったところ、

 

「元気な人はみんな東京へ行っちゃいますから」

 

と返答されたことがあります。そうなんです!元気で賑やかなことが好きな人は田舎にいないんです!

 

まぁ、他にもたくさんの原因があって、それらが複合的に折り重なって、地方の商店街は寂れたままになっているのですが、くわしく知りたい人はぜひともこの本を読んでみてください。堅苦しくない、エンタメ小説なので楽しく勉強できるはずです。