小川糸、ポプラ文庫
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主人公の倫子は25歳。アルバイトからアパートへ帰ると何もかもがなくなっていました。テレビ、食器、家具、お金、、、まるで不動産屋に案内されて下見に来たときのようでした。同棲していたインド人の恋人に持ち逃げされたのです。失恋と全財産喪失というショックが同時に襲ってきた倫子は声を失ってしまいます。
倫子は母親と不仲で、15歳のときに故郷を飛び出し、10年間一度も故郷へ帰らなかったのですが、茫然自失のなか、足は自然と故郷へ向かいます。そこは都会から遠く離れた山深い集落でした。
倫子は母親に事情を伝え、母親から借金して食堂を始めることになります。それが、【食堂かたつむり】です。
このお話は、食堂を運営する中で出会った人たち、食堂を利用してくれた人たちとのことが書かれています。
親切な人もいれば、いじわるな人もいます。そんな中で、喜んだり、怒ったりしながら生きていく倫子の姿を見てください。人と人との絆や、食べることの意味を改めて考えるきっかけをくれると思います。
ここからは私の感想です。山深く、冬には豪雪で食堂へつづく道が閉ざされてしまう【食堂かたつむり】で経営が成り立つのか?、なんて考えるのはヤボです。お話の中には、食堂の周りの自然がとても素晴らしいことを記述する箇所がこれでもかとあります。これは、大人が読む童話だと思って読み始めましょう。