須賀しのぶ、文春文庫
☆☆☆
1980年代後半にピアノを勉強するために東ドイツに留学した男子学生を主人公にした歴史小説です。
当時の東ドイツの雰囲気がよくわかるとても良い本だと思います。私は69年生まれなので、当時の記憶はちゃんとあるのですが、あの頃の日本とあまりに異なる状況が東ドイツにあったことに驚いています。
主人公は、バブル景気に沸く日本から冷戦の最前線だった東ドイツに向かうにあたって当地の状況を知識としてもっているのですが、実際に現地の人たちと交わるうちに政治的な問題にかかわってしまいます。
そこらじゅうで秘密警察の監視が行われている社会で友情、恋愛をはぐくむ主人公にどんな結末が待っているのか、ハラハラドキドキします。
伏線もたくさんあり、最後に次々に回収されるのですが、自然と読むスピードが上がり疾走感が味わえます。また、どんでん返しされたあと、さらにどんでん返しするという構成にも驚きました。
面白かったところをここに全部書きたいのですが、ネタバレになるので書けないのが残念です。