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吉田江利、33歳独身OLが主人公です。
江利の友だちが社会人落語クラブに入っていて、その発表会に招待されます。そこで落語に興味を持ち、入会を決めてお話のスタートです。
私は長年、バイオリンを習っていたんですが、この物語には習い事全般に共通することが書いてあって共感しながら読みました。
・上手くならないと辞めたくなる。
・上手くなると楽しくなって、時間やお金をつぎ込んでしまう。
・自分の実力よりも高い難易度のものに挑戦したくなる。
・名人と言われる人の芸を見聞きすると真似したくなる。
などなど、、、
ここでは落語ですが、何か習い事をしている人は読んでみると楽しいと思います。落語に興味がある人ならさらにお勧めです。
主人公が、古典落語の練習をするので江戸時代の庶民と江利の日常を対比させながらお話が進むことが多いのですが、人の心は今も昔も変わらないことが分かるところもおすすめポイントです。
それと、夢中になれることを持っていることの幸せですね。クラブのみんなは社会人なので日常の隙間時間を利用して練習している人ばかりなのですが、発表会に限らず、練習会で先生の前で練習の成果を見せるときには、普段の生活を忘れ、あこがれの名人になりきって演じているのです。つらい現実を忘れるためにお酒やドラッグに頼る人もいますが、こちらの方が百万倍有意義です。
読み終わると、自分も夢中になれる何かを探したくなる小説です。