うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

タカラモノ

和田裕実、双葉文庫
☆☆☆
母親と娘であるほのみとの関係を中心に、ほのみの目線で書かれた物語です。期間は、主人公であるほのみが小学生から社会人になって2~3年たつころまで続きます。

 

ほのみの母親は規格外の母親です。ふつうに働けないので、スナックのママをして収入を得ています。好きな男ができれば子供を家に置き去りにして外泊しちゃいます。

 

ただ、水商売をしているだけあって料理が上手で、家にいるときには子供のために料理を作ってくれます。また、夕方から深夜まで働き、朝は起きられないので子供たち(ほのみには姉がいる)との会話を補う意味で交換日記をしています。

 

ほのみの母親は《好き》を我慢できません。男を好きになるのも止めれないし、子供も真剣に好きなのです。

 

そんな破天荒な母親のもとで、ほのみは真っ直ぐに育っていくのですが、物語の中のほのみは青春ど真ん中です。進路や恋愛で悩むわけです。そんなとき、母親のアドバイスが素晴らしいんです。この部分をみなさんに読んでほしいと思います。

 

参考に、社会人になったほのみが、後輩から「私は自信がありません。どうしたら先輩のように自信が持てますか?」と質問されたときの答えを書いておきます。

 

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あのね、どうして自信がついたかっていうとね、母がめずらしく運動会を見に来てくれたときに、わたしはやっぱり周回遅れのびりっけつで、もう恥ずかしくて、悲しくて、トイレにいくふりをして泣いてたの。そしたら母が追いかけてきて、『気にしんとき』って、それから、『よう、がんばったなあ。いちばんになるのもすごいけど、びりなのに、恥ずかしいのに、最後まで走れるあんたはほんまにすごいわ。ママ、それ誇りに思うわ。あんたのおかげで、他の子はびりにならなかったもんなあ。いいことしたな』っていってくれて、わたし、・・・たぶん、それが自信の原点のような気がするの。欠点だらけだったけど、自信が持てるところ増えなかったけど、拗ねたりひねくれたりせずに、まっすぐに生きてこれたの。そんな言葉を杖にして、わたし歩いてるんだよ。
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ほのみの母親は、あきらかにダメ人間で、失敗ばかりの人生ですが、そのせいで弱い人間にやさしいのです。このようなやさしさは成功者は絶対に持っていません。ほのみの母親がやっているスナックが近所にあったら、私の話も聞いてもらいたいなあと思いました。

 

とても良い本なのでお勧めです。