原作:クワハリ
漫画:出内テツオ
出版社:集英社
☆☆☆
軽音楽部を舞台にした漫画です。ですが、ヒットアニメ【けいおん!】とは方向性が全く違う内容です。
【けいおん!】では登場キャラが全員美少女で、悪人が一人も登場しない仲良しグループのほのぼのとしたお話になっていましたが、【ふつうの軽音部】では人間関係が原因になってキャラがくっついたり、離れたりします。美男子で音楽的才能に恵まれたサイコパスまで登場するので、【けいおん!】の路線を期待する方は読まない方が良いでしょう。
その代わり、リアルな高校の軽音部を見せてくれる漫画になっています。たくさんの人が集まってみんな仲良しなんてありえません。
主人公は鳩野ちひろという高校一年生の女子なんですが、高校からギターを練習し始めた初心者です。なので、ちひろと一緒に軽音部の特殊な世界を体験していくことができます。
1巻で、「そう言えばそうだな」と思ったのは、どうやってバンドメンバーを集めるか、ということ。ちひろはその辺何も考えず、最初は「軽音部に入ったら自然とバンドができる」と思っていたのですが、新入生説明会で先輩から、
「気の合う同士でバンドは作ってください」
そのため、既刊の1~3巻はちひろが所属するバンドのメンバーが集まるまでを描いています。だから、この記事を書いている時点でちひろは本格的なバンド活動をしていません。その辺は冬に発行が予定されている4巻に期待です。
私もバイオリンをやっていて、合奏経験があるので分かるのですが、合奏すると人間関係が濃密になります。相手の音を聞いて合わせなければならないからです。これがストレスになるのですが、その分、ピタッと音が合ったときに快感なのです。でも、一朝一夕にして音がぴったり合うなんてことはなく、そうなるまでにドラマがあるんです。
【ふつうの軽音部】は音楽のうんちくよりも人間ドラマ重視の構成になってます。とても面白い漫画です。合奏を始めてみたい方から年季の入ったバンドマンまで、「へーっ、そうなんだ!」と思ったり、「あるある」と共感したりしながら読めるので、たいへんお勧めです。