あすにはなろう

思ったことをとりとめもなく書いてます。何のまとまりもありませんが、読んでいただけたらうれしいです。

ポンコツ一家

にしおかすみこ、講談社

☆☆☆

SMの女王様スタイルでピン芸人を昔されていた方が、ポンコツ一家を一人で背負って孤軍奮闘する姿を描いた自伝です。

 

家族は、にしおかすみこサンを含めて4人います。

 

父:にしおかサンはアル中ではないと書かれていますが、作中に登場する父はいつも泥酔していて、24時間連続飲酒状態になっていると推察できるので、アル中だと私は思いました。

 

母:軽度から中程度の認知症。体はどこも悪くないので、ボケたまま余計なことをしたり、徘徊したりする一番介護しづらいボケ老人です。

 

姉:ダウン症。程度は中程度。会話はできるが、本能のままに生きている。ゆえに我慢はまったくできない。10日以上お風呂に入らないのがデフォルト。

 

以上のような何の役にも立たないメンツを一人で背負って家の秩序を維持しようとする姿を自分語りしています。

 

私も認知症で寝たきりの母を介護した経験がありますが、母一人でも泣きたくなりながら毎日過ごしていたのに、三人も要介護者がいたら地獄です。

 

作中で、にしおかサンが家族に向かって怒ったり、感極まって声を上げて泣いたりしますが、よくこれで済んでいるなぁ、と感心します。普通のメンタルなら絶対に介護うつになります。

 

でも、私は介護経験者としてこの本を素晴らしいと思いました。これまでの介護関連本は、【楽しく介護】みたいなうそ臭い本ばかりだったからです。

 

ブログも同じ。私は介護していたとき、「私みたいに愚痴を言いながら介護してる人いないかな」と検索しましたが、見つかりませんでした。

 

『親孝行ができて幸せ』

 

みたいなブログばっかりでした。

 

私と同じような心境の人と愚痴をこぼし合いたかったのに皆無でした。きっとあったのでしょうが、Googleが検索上位に上げてくれないのです。

 

惨めな気持ちになって心が潰れそうなとき、自分と同じ境遇の人と語り合って慰め合うのってとても大事なことだと思うのです。たとえ、それで事態が改善しなくとも心は休まるはずだからです。

 

この本の良い点ですが、完璧を目指していない点です。介護ブログを見ていると、介護してても私の家はこんなにオシャレみたいなやつばかり出てきますが、にしおかサンは「できないことはできない」と言って、手を抜いていることを隠してないこと。これは、超人ではない普通の人が介護する場合にたいへん参考になるアドバイスです。みんながみんな、体力オバケで鋼鉄のメンタルを持って生まれたわけじゃありませんからね。

 

あと、こちらがより大事な美点ですが、にしおかサンがお笑い芸人を目指していた人だけあって随所にユーモアが光っていて、読者をむやみに暗闇へ引きずり込まないところです。爆笑はできませんが、微笑むことはできます。

 

現在進行形で家族の介護をされている方々は買って読まれることをお勧めします。そして、つらいことがあったときに読み返してください。弱者こそ連帯しなければなりません。