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藤本あすみ(28)の恋人は自称飲食店経営者の理空也(りくや)です。理空也は衣食住すべてにおいて洗練されたものが好きで、しかも我慢が出来ないない美男子です。
「今は店の運転資金が必要な時期で現金がないからあすみが払っておいて。結婚したらタワマンに引っ越して好きなだけ贅沢させてあげるから。」
と言われ、その言葉を信じて理空也の欲しいものすべてを買い与えてました。
すっかり社長夫人になるつもりだったあすみは正社員で働いていた会社に辞表を提出して引っ越す準備をしていたのに、あすみが貯金を使い果たし、カードの限度額いっぱいまで買い物をしたところで理空也はあすみの前から蒸発します。残ったのは高額なカードの支払いだけでした。
ここから、始まる復活劇が本編となります。
私の感想ですが、あすみがピンチのときに良い人が次々に引き寄せられてくるのがいかにも作り話だなと思いました。ただし、やりすぎです。
あすみは日雇い労働するのですが、出会う人は善意溢れる人だけです。社会の底辺でしか生きられない人たちがこんな善意の人なわけありません。現実は一癖も二癖もある人ばかりです。あすみの物語を見て、
「金ならなんとかなるもんだな」
なんて軽く考えないようにしましょう。その他にも無料で相談にのってくれるファイナンシャルプランナーや弁護士、会社の利益を度外視してアドバイスしてくれる人材派遣会社の社員など、いくらなんでも出来すぎです。
あと、この本は女性の金銭感覚を勉強する教材になるなとも思いました。あすみは金策に走り回っているときにも気軽に喫茶店に入ってお茶をするのですが、正直、馬鹿っぽいと思いました。物語の終盤で少しお金に余裕が出てくると新しくできた男とのデートに着ていく洋服を買ってしまうし。
貧乏脱出物語としては物足りない本です。ひと月10万円で暮らしている私からすると貧乏はもっと恐ろしいものです。そして、幸運に恵まれた人でも現実には、こんなに次から次へと助けてくれる人は現れません。