5年前に母が亡くなってから、家の中の物を少しずつ捨てています。
燃えるゴミが週二回、不燃ゴミが週一回、近所に目立つのを避けるため、その日に家から一往復でゴミ置き場へ持っていけるだけの量を捨てています。これを五年続けているのに家の中が一向にスッキリしません。
この家に住み始めて40年以上経っているので、それまでに両親がため込んだ物が私には無限に思える量あるのです。両親に対して、よくぞこれだけため込んだものだ、と感心しています。
私の両親は、まだ小さかったころにですが戦争を体験した世代であり、戦中戦後の物がなかった日本を体験した世代です。この世代に共通しているのは、物が捨てられないということです。そりゃ、焼け野原の日本を子供の頃に体験したら【物を大事にする】という精神が骨の髄までしみ込んだことでしょう。
また、一戸建てを手に入れたことで収納スペースがたくさんあったことも原因の一つです。使わなくなった物もとりあえず押し入れへしまえば両親の中では解決したことになっていたのです。
そして、いつか大掃除すると思いながらも時が経ち、お迎えが来てしまって子供の私に大掃除が託されたというワケです。
それにしても物を捨てるのって疲れます。自分で買った物ではないので、手に取って思い出にふけって時間が過ぎるなんてことはないのですが、燃えるゴミか不燃ゴミか、そして捨て方が分からない物か、それを分けるだけで頭を使って疲れるのです。
そして、ゴミを持って行ってもらえる大きさに切断して小さくするなんて作業もやってますから、疲れるわけです。
こんなことを5年も続けているので、買い物をするときに捨てる時のことまで考えるクセがつきました。とくに捨て方が分からない物は極力買わないようになりました。
戦前の日本は貧しかったので、庶民の家の中が不必要な物で溢れるなんてことはなかったでしょうから、実家の片づけで苦しむ私のような世代は日本の歴史上初めてのことと思います。
そんなことを考えながら、独身、子供なしの私は両親のように子供に託してあの世へ行くという選択肢がないので、ため息をつきながら今日もゴミを捨てるのでした。