あすにはなろう

思ったことをとりとめもなく書いてます。何のまとまりもありませんが、読んでいただけたらうれしいです。

B型事業所で一期一会だった人

私は週一でB型事業所で働いています。時給は二百円です。

 

私がB型事業所で働き始めた理由は家に引きこもって誰とも喋らずにいると気が変になりそうだったからです。

 

B型事業所に通っている人はみなワケありなので、利用者同士で、

 

「どうしてB型事業所に通っているの?」

 

と質問するのはタブーとされています。

 

ただし、自分から話すぶんにはかまわなくて、話してくれる人も稀にいます。

 

私の通うB型事業所では座って軽作業をするのですが、利用者同士のトラブルを避ける目的で午前と午後で席替えをします。朝に出勤したら座席表を確認して着席し、お昼ごはんが終わるころに発表される座席表を見て移動して着席するというぐあいです。

 

その方(以下、Aさん)とは午前中に作業台を挟んで向かい合わせになり、2時間お喋りをしながら作業しました。Aさんから

 

「どこのグループホームから通ってますか?」

 

と質問されました。私は正直に実家から片道90分かけて通っていますと答えました。グループホームにたどり着く人も漏れなくワケありですから、そこは掘り下げたりしません。私が黙っていると

 

「私は40代です。小中高と不登校気味でしたがなんとか卒業できました。大学は自由だったので嫌いにならずに通えたのですが、大学に残れるほど勉強ができなかったので卒業して一般企業に就職しました。でも、会社はそれまでの人生で一番私に合っておらず、一か月で退職しました。それから今日のこの日まで働くことなく過ごしてきました。」

 

何と返事したら良いか分からず、5分ほど沈黙して作業に没頭。

 

「あなたは、ここに来る前はどうしていましたか?」

 

と質問されました。B型事業所でかつて国家公務員だったなんて言ったら完全に浮くので、

 

「前はサラリーマンでしたが、過労でうつ病になるような職場だったので昔のことは話したくありません」

 

と答えてはぐらかしました。

 

「そうですか、そういうこともありますよね」

 

と返事があり、また5分ほど沈黙して作業に没頭。

 

「なにか趣味はありますか?」

 

と質問されました。真っ先にバイオリンが頭に浮かんだのですが、これもB型事業所で言うと完全に浮くので

 

「無趣味な人間で、休日は家の周りを1時間くらいかけて散歩するくらいで、それ以外はゴロゴロしているだけです」

 

と嘘ではない範囲で答えました。すると、

 

「私は、乃木坂が好きで推し活してるんです」

 

と返事がありました。そこから、乃木坂のメンバーのお話をずっと話してくれたのですが、こちらにまったく知識がないので「そうなんですか」としか返事ができなかったので申し訳なくなりました。

 

「アイドルは営利目的で活動しているから、推し活するとお金がかかるんじゃありませんか?」

 

と私から質問すると

 

「そうなんです。本当はコンサートへ行ったり、オンライン(*)でメンバーとお話ししたいんです。でも、お金がないから収入の範囲で応援しています。」

(*きちんと理解できなかったのですが、お金を払うと乃木坂の好きなメンバーとオンラインで会話できるらしい)

 

と寂しそうでした。

 

私は一度結婚して女性の実態を知ってしまったので女性に幻想を抱くことはありませんが、弱者男性で40代まで女性と縁がなく過ごしてきてしまった男性には20代の女性はより一層輝いて見えるだろうと想像し、Aさんの苦悩を感じました。

 

お昼ごはんのあと、席替えしてもAさんは乃木坂の素晴らしさを私以外の利用者に語ってましたが、会話が盛り上がっているようには見えませんでした。

 

あのとき、AさんがB型事業所で同志を得ていたら一週間後にも会うことができたと思います。しかし、一週間後にAさんの姿はありませんでした。そして、それからずっとAさんには会えていません。

 

B型事業所の利用者はみなワケありです。通う理由を聞くのはタブーですが、辞めた理由を詮索するのもタブーです。Aさんが来なくなっても誰もそのことに触れる者はなく、何事もなかったように、いつも通り作業に従事しています。

 

こんな感じで、B型事業所では一期一会の出会いも珍しくありません。それも時給200円のなせるわざでしょう。お金以外のなにかメリットが感じられなければ辞めてしまいます。Aさんのように居場所を探して通ってくる人も確実にいます。