pha、幻冬舎
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かつて【日本一のニート】と呼ばれたphaさんが近況を語る本です。phaさんも40代半ばになりました。
今のphaさんは古い賃貸住宅で独り暮らしをしていて、小さな本屋さんの店員として働く、どこにでもいるショボいオジサンになってます。
phaさんの著書【ニートの歩き方】(2012年出版)を書いたときのような勢いはこの本にはなくて、くたびれたオジサンの独り言をずっと聞かされている気持になります。
だから、この本のターゲットは40代です。50代になるとこのようなことは諦めるという方法で解決済みだし、30代には「情けない奴」と切り捨てられて終わりでしょう。ましてや20代には20年後の自分なんて想像も出来ないでしょうから価値のない本です。
40代の人でもこの本だけ読むと、なんで幻冬舎がこんな内容の本を出したのか分からないと思います。2012年に出版された【ニートの歩き方】を読んでから、この本を読むと、一人の人間の中でこれだけ思想が変わってしまうのだということに驚きと興味をそそられると思います。
phaさんは、ずっとダメ人間を続けていたかったそうです。しかし、年を重ねるごとに同年代のダメ人間たちは淘汰されて姿を消し、いつの間にか周りは10歳以上年下ばかりになりました。話が合わなくなったこと、そして、ダメ人間でも若者は外見が美しいのでサマになるのですが、40代でダメ人間だとただの痛々しいオジサンにしかならないことにphaさんは気づきます。
それと、インターネットに期待しすぎたと懺悔しています。インターネットの黎明期、これがあれば働かないで生活できるとphaさんは真剣に思っていたのですが、スマートフォンの発明により誰もがインターネットを利用するようになるとインターネット空間が現実世界と変わらない殺伐としたものになりました。phaさんは、「匿名で情報発信できるインターネットは怒りや嫉妬と相性がよすぎた」、と記述しています。
そして、中年クライシスの症状である「感動しなくなる」ということにもぶつかっています。30代までは停滞が嫌で、変化が好きでした。だから、一か所に2年以上住んだことがなく引っ越しばかりしていたそうです。しかし、今は同じ場所にずっといたい。旅行もワクワクしなくなった。などなど、日常で心が高揚することがめっきり減ってしまったと嘆いています。
ここからは私の感想ですが、中年クライシスは多くの人が通る道であり私も共感しながら読みました。それよりも知的好奇心を刺激されたのは、
【ニートの歩き方】
↓
【パーティーが終わって、中年が始まる】
の間に12年しか経っていないのに、ニートを取り巻く社会情勢が激変してしまったことです。phaさんも、「物価が高くなって働かない人間が暮らしにくくなった」と正直に記述しています。
私が55年生きてきて思うことは、最先端の物(技術、ファッション、ライフスタイルなどなんでも)はスグに時代遅れになるってことです。phaさんが2012年に提唱したニートの生き方はデフレ時代のあだ花でした。
最後に、こんなショボいオジサンの独り言を天下の幻冬舎が本にしてくれるなんて、《京都大学卒業》というブランドはつくづく凄いことなんだな、と思いました。ニートにも学歴が必要です。