今日もやっぱり処女でした

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夏石鈴子角川学芸出版
☆☆☆
庶民の、庶民による、庶民のための小説といった作品です。人より優れた美点があるわけでもなく、かといって劣等感に苛まれているわけでもなく、ときおり、

 

『神様、私の居場所ってここでいいのでしょうか?』

 

と考え込んでしまう山口あおば、24歳が主人公です。

 

あおばはいつも元気溌剌なんて無理だし、他人から「がんばれ」と言われることも苦手。やりがいのない仕事で毎日遅くまで残業させられ、最寄り駅に帰り着くたび、

 

『これで終わり?本当に終わり?何も起こらなかったのに!』

 

と駅のホームに立ちつくす日々に疲れ、せっかく正社員で就職できた会社を辞めてしまいます。そして、理不尽なことがいっぱいある正社員ではなく、夢のために残業がない派遣社員として働き始めます。

 

あおばの夢はイラストレーターになること。昼間は派遣の仕事をして、夜にイラストレーターになるための教室に通い始めます。しかし、イラストレーターの仕事で生計が立てられる人はほんの一握りの才能がある人だけ。ここでもあおばは『これでよかったのか?』と自信がありません。

 

この物語に出てくる人たちには様々な困難が降りかかるのですが、才能と努力でそれらを乗り越えて、最後にガッツポーズをするような人は一人もいません。みんな少しずつ諦め、困難から逃げて、なんとか自暴自棄にならずに生きている人ばかりです。読んでいて、居酒屋でお酒を飲みながら、仲の良い友達の身の上話を聞いてあげているような気分になる小説でした。